共に在る者
「なんとなく覚えてる……」
 
 うっそうと茂る森。

 ただし日の光がしっかりと届いているその場は、奥深い森の中であっても薄暗いという印象は無いのだが、それが逆にあだとなってしまった。

 少しでも不穏な空気をかもし出す場所であったならば、リリは恐れをなして足を踏み入れることはしなかっただろう。

 『時空の狭間』は見る物全てが新鮮に映る幼いリリにとって、かっこうの興味の対象だった。

 

 更にトウヤは話を続ける。

「自分の意思を持って狭間に踏み込めば望む“時”と“場所”にたどり着けるのだけど、それは5歳のお前に取っては無理なこと。

 だからリリアンヌ自身も、僕達もお前がどこにたどり着いたのかははっきり分からなくて」

「そうだったんだ……」
 
 自分がなぜ一人きりだったのか。

 リリはようやく理解した。



「だけど、リリアンヌは失うことのできない大切な存在だから、苦労を承知で探すことにしたんだ。

 誰かが通った後の時空には、ほんのわずかだけど捻じれが生じる。

 それを頼りに僕は後を追ってみたんだけど、これが想像以上に困難でね……」
 
 リリは自分の好奇心の結果で家族に大変な心配と苦労をかけたことを申し訳ないと思い、その気持ちを目の色ににじませて俯くと、トウヤは首を横に振った。
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