共に在る者
「気に病むことじゃないよ。

 どれほど大変でもリリアンヌを探し出したかったから」
 
 トウヤは慰めるためにリリの頭をなでてやる。

「時空の流れはあちこちで絡まっていて簡単に進めなくて、思っていたよりも時間がかかってしまったんだ。

 あと、これは実際に狭間を通ってみて気付いたんだけど、時空間を移動するにはけっこうな負担がかかるんだ。

 だから子供のお前には負担が大きすぎて、心に影響を及ぼした結果で記憶を失ってしまったのかもな」

 
 リリは自分よりも随分と背の高い兄を見上げる。

 そこには長いこと自分を案じてくれていた心配げな瞳と、ようやく再会することができた喜びの瞳があった。

「リリアンヌ、5年も待たせてごめんね」

 トウヤはリリを抱き寄せる。


「私にはやっぱり、家族がいたんだね……」

 ポツリとつぶやく。
 
 ようやく自分の家族の存在を知ることができ、もう1人きりではないのだという安堵が今まで張り詰めていたものを解き放ち、それが涙となってあふれ出す。
 


 ただ、その涙はこれまでに流してきた涙とは意味合いの違う、嬉し涙だった。
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