束縛する人
グロスもすっかり取れてしまった唇を
親指でそっと拭われる
「せっかくオシャレして来てくれたのにな…」
照れくさそうに笑いながら
私の頭にポンっと手を置く
――いつもの塚本さんに戻った…
なんとか落とさないように死守したケーキを食べながら
「オレさぁ〜
…やきもち妬きなんだ」
と俯きがちに塚本さんは言った
バイト中に間違って呼ぶといけないので
ずっと“浩”ではなく“塚本さん”と呼んでいた
そのことはお互いに了解済みだったはずなのに…
祐輔のことを名前で呼ぶのを聞いた瞬間に
「どうしようもなく…嫉妬した」
と苦笑いし…
残していた苺を頬張った