もう一度だけ


バレンタイン当日、

「今日暇ー??」

ぐらいちゃんと直接聞こうと思ってたけど、言えなかった。

情けないと思いながらも君にメールをした。

夜、近くの菖蒲沢公園で会うことになった。

その日の夜は、見渡す限り一面の雪だった。

菖蒲沢公園に行くまで、洋服は雪が積もってくるし、ムートンはいっぱい歩いたせいで、水が凍みるし…

最悪だった。

でも、そんなことよりも緊張でいっぱいだった。

雪も降ってて、人影もなく、静かなところで君に会う。

こんないいムードで話せるかな。

君の目を見て話せるかな。

不安だった。


真っ白で先が見えない道をゆっくりゆっくり進んで、やっと菖蒲沢公園の前に着いた。

雪のせいでよく見えなかったけど、人らしき影を見つけて、だんだんこっちに近づいてきて、君だということに気がついた。

やっぱり話せない。

顔さえ見られない。

傘で自分の顔を隠して、君に近づいてクッキーが入ってる袋を君に、「はい」っていって渡した。

君は、「ありがと」って言った。

あぁ、またクリスマスと同じパターンかぁ…

渡した後、私はすぐに引き返して「バイバイ」って言って帰ってしまった。





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