永遠の約束-聖母の涙-


「あそこが、薔薇苑なのですか?」


「実際は薔薇苑ではありません。

ただ、あそこに咲き誇る薔薇の多さに、私たち生徒の間では、あそこが通称『薔薇苑』と呼ばれています」


「そうなんですか~…」





 確かに、薔薇の量は多いけど、一種類だけだったし―――…。


 でも、確か来るときに見たけど、あそこには何脚か椅子とテーブルが用意されていたような―――…


「大体の生徒は、カフェなど店のほうで食事を済ませるので、あそこは結構穴場なんですよ」


「そうなんですか…」





 薔薇に覆われ、そして芝生が敷き詰められているあの場所を思い浮かべて、確かに…と深青は頷く。





 それにしても、あんなに素敵な場所があるのに、そこを使わないなんてお嬢様はわからない。


 きっと、ここが自分が通っていた公立高校だったのなら、人気殺到するに決まっている。


 だけど、そもそもただの公立高校にこんな素敵な場所があること自体があるはずない。


 深青は思えば思うほど、悲しくなってきた。











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