永遠の約束-聖母の涙-
コツ…という足音が止まったかと思うと、首筋に冷たい感触が伝わってくる。
それが、自分の首にあのナイフを突きつけられたのだとわかる。
それと同時に、これまで行方不明になった学生たちがどのような姿で発見されたのか、思い出された。
ああ…、私もあの子たちと同じように―――…
【鋭利な刃物で首を切られて、大量の血液が抜き取られていた】
それが、これまでの被害者全ての共通点。
だからこそ、みんな吸血鬼の仕業ではないかとまで噂されていた。
そんなもの、いるはずなんてないって思ってた。
だから、そんな風に噂をしている彼女たちを馬鹿にでもしていた。
だけど、今はどうであってもいい。
ただ、馬鹿にしていたはずの自分はその被害に遭ってしまうんだ………。
死を目の前にして、祥子は自分がどれだけ恵まれた生活をしていたのかと思い出す。
両親が愛情をかけて、過保護とでも言えるほど大事に育ててくれた。
だけど、そんな両親の思いを無下にして、この有り様。
“ごめんなさい…。お父様、お母様………”
幾重にも流れる涙。
目を閉じると、首筋に触れた冷たい切っ先が冷たさから熱さへと変わる。
痛みよりも、熱さ。
首筋に熱を感じたと同時に痛みを感じた。
そして、何も考えることもできないまま、祥子はそのまま意識を失っていった―――…