永遠の約束-聖母の涙-
「シスター糸川? 真理亜です!」
深青がじっとマリア像を見つめていると、マリア像が建っている位置から奥に続く扉を開け、真理亜は名前を呼んだ。
『シスター糸川?』
転校してきてから一度も聞いたこともない名前に、深青は首を傾げた。
一応、学校の教師や事務員など関係者のリストはもらっていた。
だから、頭の中にはそれなりに入っているのだが、そんな名前は全く知らない。
一拍待ったところで、「は~い」という柔らかな声が奥から聞こえてきた。
「ごめんなさい、真理亜ちゃん。
ちょっと今、手が離せないの。
入ってきてもらえる?」
「わかりました~」
奥からの声にそう返事をした真理亜。
そして、真理亜は後ろを振り返ると深青に「さあ、行きましょう」と促す。
「え?
私も勝手に入っちゃっていいんですか?」
恐らく、奥にいるシスターと言われる人は真理亜だけが来ていると思って呼んだのだろう。
それなのに、見ず知らずの深青が入っていっていいのか深青は躊躇する。
しかし、真理亜はそんな深青の戸惑いなど、気づいていないのか―――…
「大丈夫ですよ!
深青さんのことをシスターに紹介するのも目的なんですから」
「いや。そういう問題では―――…」
紹介するとかしないとか、そういうこと以前の話なんだけど―――…