永遠の約束-聖母の涙-
第1章 聖マリオネット女学院
(1)
「ご機嫌よう。如月さん」
「ご、ごごご機嫌よう……」
思わず舌を噛みそうになりながらも、深青は引きつりそうな自分の顔を抑えて、微笑みながら挨拶を返す。
それに、満足そうな笑みを浮かべながら軽く会釈をするクラスメイト。
そんな彼女たちが去ったのを見てから、深青は溜息を吐いた。
一体、自分はどうしてこんなところにいるんだろう?
その理由を深青は知っている。
だけど、自問自答せずにはいられなかった。
それもそのはず。
初めてというわけではない。
転校してから一週間は経っている。
それでも、この豪華な建物を見るたびに、自分には場違いな気がしてならないのだ。
そもそも、深青は、本当の意味では聖マリオネット女学院の生徒ではない。
都立鈴白学園。
それが、深青が本来通っている学校だった。
普通の公立の進学校。
ただ、それだけ。
特別、家柄のいい生徒が通うとかそういうこともない、一般的な子が通う普通の公立高校。
だから、挨拶一つにとっても、『ご機嫌よう』なんてそんなテレビの中でだけでしか聞いたことがないような挨拶をしたこともない。
たかが挨拶。
だけど、されど挨拶。
挨拶一つだが、深青にはそれさえも慣れずに、あたふたとしていた。