永遠の約束-聖母の涙-
(3)
「う~ん…」
一つの部屋から漏れる、異様な声。
その声に、トレーにお茶と茶菓子を乗せ、部屋の前で立っていた唯香はノックしようとした手を止める。
そして、そっと耳を部屋のドアへと近づけた。
母に言われ、渋々ながら帰ってきてから部屋に篭る姉にお茶と茶菓子を運んできたのだが、いざノックをしようとしたところで、先ほどの唸るような声が聞こえてきたのだった。
自分とは性格的にも違い、どちらかというと、昔から冷静沈着で成績もよければ、抜群の抜きにでた能力を持つ姉。
だから、その姉がこのような声を漏らすということは、この前に依頼されていた事件が手詰まりだということ。
あの姉でさえも、手詰まりなそれほど複雑な事件というものに、興味があるといえば、あるのだが―――…。
それよりも何よりも、このように悩んでいる姉の姿は珍しい。
これは、チャンスね。
お姉ちゃんが悩んでる姿が見れるかも!
イシシ…と心の中で笑いながら、唯香は耳をドアに近づけ窺う。
すると、ガチャッという音と共に今まで近づけていたドアが開いた。
「うわっ、うわっ、ととっ…」
ドアが突然開いたことで、体のバランスを崩した唯香。
だけど、すぐに自分の腕にかかる重みの正体に気づき慌てだす。