永遠の約束-聖母の涙-
「事件の概要は、唯香も松下さんの話を聞いてたから知ってるわよね?」
「うん。
あの時から、一人被害者が増えたんでしょ?」
「ええ……」
神妙な表情の深青とは対照的に、唯香は飄々とした表情で応える。
「お姉ちゃんがそんな顔しても仕方ないよ。
あの事件が起こったのは、お姉ちゃんが転校する前だったんだから」
「でも、遺体が発見されたのは、転校してきた後よ。
だけど、何の痕跡も未だに掴むこともできない」
「それは仕方ないって。
警察も隅々まで学園内を捜して、その痕跡を見つけようとしたんでしょ?
それでも見つからないんだもん」
「警察と私が請け負った仕事は、根本的に違うもの。
そんなの理由にならないわ」
「ま、それはそうか…。だけどね………」
ここで深青が言っていた痕跡。
それは、警察が捜している証拠や物証などではない。
何かしらの霊が関係しているとなると、その類がいたという澱んだ空気など、そういうことを言っていたのだった。
一般人には見えることも感じることもできない。
たまに霊感の強い人間などは、急に悪寒を感じたりする。
それが霊の気配を感じたとかいうこともある。
だけど、それを確実に自覚できるのには、並外れた霊感と能力を持つものでしかない。
「本当に微々たるものさえも、感じないの?」
「ええ…。
でも、霊の仕業よ。それは間違いないわ」
「その根拠は?
霊の痕跡は見つけられないんでしょ?
それなのに、霊が関係しているって、その根拠は?
まさか、お姉ちゃんともあろう人が、ただの勘とか言わないわよね?」