永遠の約束-聖母の涙-
「唯香、ありがとう。
一筋の道しるべが見えた気がする」
「へ? 今ので?」
唯香は怪訝な表情で首を傾げる。
先ほどの会話を思い返すも、全く道しるべになるようなことがなかったように感じる。
「ええ」
そう返事をしながらも、なぜか唯香の目の前で動き出す深青。
その行動に、唯香は眉を顰めた。
「…まさか…とは、思うけど……。
お姉ちゃん、今から学校に戻るとか………」
「ええ。そうよ。帰るわ」
急に鞄に周りの物を詰め込む深青。
目の前に広げられている資料を手際よく纏めると、深青は無駄のない動作でそれを鞄の中に収めると、立ち上がった。
「それじゃ、唯香。またね」
「…う、うん………」
呆気に取られながら、唯香はただ深青に頷いた。
性格的には大人しく、常に冷静でしっかり物。
どちらかというと、行動力はいつもは自分のほうが勝っていると思っている。
それは、周りもそう思っている。
だけど、こういう霊関係に関しては、深青は思いもよらない行動力を発揮する。
「まさか、今の今で帰るとは………。
あの行動力は、どこから出てくるのかな?」
深青が帰ってきたのは、早朝。
帰ってきた時から、何かしらの問題に行き詰っているという印象は受けていた。
でも、気分転換も兼ねてこの週末はいると思っていたのに………。