Mに捧げる
その日の夕方、都は正樹のアパートで、三十八度の高熱を出し、一人きりで床に臥せていた。
暑い季節にも関わらず、朝から悪寒を感じたり、吐き気を催していたのだが、父親と会いたいが為に、具合の悪さを押してまで、正樹のアパートを訪れてしまったのだ。
『夕方から大事な約束があるから、祖父ちゃんたちの所に送っていくよ』と正樹は気を揉んでいたが、都はそれを拒んだ。
看病してくれる保護者がいなくても、今夜は大好きな父親のアパートで過ごしたいと、強く望んだのだ。
今思えば、あれは虫の知らせだったのではないかと疑問に感じる時がある。
一人では心細いと正樹を引き止めていれば、回避出来た事故だ。
時計の針が夜の十時を回っても正樹は帰って来なかった。
十二時、一時と過ぎていき、都の胸中に言い表しようがない不安が込み上げた。
正樹は具合が悪い娘をいつまでも放っておくような父親ではなかった。
なるべく早く帰ると言い残し、友人に会いにいったのだ。
その大事な用件とやらが長引いているのだろうか。
暑い季節にも関わらず、朝から悪寒を感じたり、吐き気を催していたのだが、父親と会いたいが為に、具合の悪さを押してまで、正樹のアパートを訪れてしまったのだ。
『夕方から大事な約束があるから、祖父ちゃんたちの所に送っていくよ』と正樹は気を揉んでいたが、都はそれを拒んだ。
看病してくれる保護者がいなくても、今夜は大好きな父親のアパートで過ごしたいと、強く望んだのだ。
今思えば、あれは虫の知らせだったのではないかと疑問に感じる時がある。
一人では心細いと正樹を引き止めていれば、回避出来た事故だ。
時計の針が夜の十時を回っても正樹は帰って来なかった。
十二時、一時と過ぎていき、都の胸中に言い表しようがない不安が込み上げた。
正樹は具合が悪い娘をいつまでも放っておくような父親ではなかった。
なるべく早く帰ると言い残し、友人に会いにいったのだ。
その大事な用件とやらが長引いているのだろうか。