Mに捧げる
都はいつの間にか眠りに落ちていた。


浅い眠りの中で、何度も薄気味悪い夢を見た。


目覚めた時には全身に汗をびっしょりかいていた。


そのおかげで、熱は下がっていたものの、父親の姿が見当たらない。


都は玄関を飛び出していた。


八畳一間の狭い室内が、とてつもなく長い距離に思えた。


嫌な予感は当たってしまうと、痛感したのは数分後。


アパートの階段を駆け降りた先で、信じられない光景が視界に飛び込んできた。


アスファルトの上で、父親と思わしき成人男性が転がっていたのである。


その人物が父親であると判別する前に、都の脳はそれが遺体であることを認識した。


頭部のほうには血溜まりが出来ていて、男性はぴくりとも動かない。
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