例えば私と彼が。

「よぉ。男女。顔がにやけてしまう??」


山代幹太はニヤニヤしながら私の顔を覗きこんだ。

「男です!」


「お前、胸が小さくて良かったなぁ。」


「なっ!!!」


「でも、気をつけろよ。田辺さん、ああ見えてホモだから。」

「…………!?」


「あ。驚いた??」


「どうせ嘘でしょ?」


「今夜あたり誘われたら食われるな。」


「バカみたい!そんなことない」

「俺、嘘は嫌いだから。誘われたら俺と出掛けるって断れよ」

急な山代幹太の真面目な顔に私は少しドキドキした。


「ちゃんと断れよ?」


山代幹太は私の頭をバシッと叩くと撮影場所に戻っていった。

「もぅ!田辺さんは撫でてくれたのに…―」


でも、どうしてか山代幹太の真面目な顔が頭から離れなかった。
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