例えば私と彼が。
「なんでマック?売れっ子なんだからもっとオシャレなレストランかと思った!!」


「贅沢言うな!俺がおごったんだからいいだろ?」


あれからすぐ近くのマックに車で移動してドライブスルーで食事を買った。


で、海の見える公園で食べた。

「もぅ暗いよ?帽子とサングラス取れば?」


帽子を深くかぶってブランコに座る幹太が何だか可哀想になって声をかけた。

幹太は空を見上げてから周りを見渡し、帽子を取った。


「芸能人って大変だね。」


「お前ももぅ芸能人だろ?」


「私はまだまだ…―」


「そうだなぁ。普通の人間に戻りてぇなぁ。」


「何で?みんなから好かれてるじゃん」


私がそう言うと幹太は切なそうな顔をして少し笑った。

私にはわからない胸の深いところで幹太は悩みを持っているのかも。


私は幹太の前にしゃがむと幹太の胸に手を当てた。


「なっなにすんだよ!?」


「手当て。」


「は?」


「うちのお母さん、看護婦なんだ。痛い思いしてる人には手を当てて大丈夫っていってあげるのが一番の薬だって口癖だから。」


触ってると、あったかくなる幹太の胸はまだまだ大丈夫だ。

生きてるだけで
幸せだ。

私は寛太が有名な俳優さんの前に普通の男の人だって事に改めて気づいた。
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