1ページの恋
魔法
『魔法があったらな…』
彼女が呟いた
『そうだな…』
俺も呟いた。
その通りだと思った…
魔法があればまた昔みたいに…
『嫌いになったわけじゃないのにね…』
『うん』
そう言うのが精一杯だった。
いつの間にか広がった距離を今さらどうにかするには魔法しかない…彼女もそう思ったんだと思う。
ふとテレビのニュースに目がいった。
『俺さ…ひとつだけ魔法使えるんだけどさ…』
『…どんな魔法?』
『ある場所じゃなきゃ使えないんだけど…付き合ってくれる?』
『うん。』
スクーターで25分ほど走った。
『…ここ…』
『…うん。俺らのスタートライン。』
『…魔法は?』
『目ぇ瞑って?』
5分ほど経った。
『まだ?』
『もういいよ』
彼女は目を見開いた。
『…どうして…?』
『魔法使えるって言ったろ?』
『だって…さっきまで…』
さっきまで蕾だった桜はしっかりと花開いている。
『…俺と付き合ってください。』
あの時と同じ時間
あの時と同じ場所
あの時と同じ距離
『…っ』
あの時も彼女は泣いていた…そして…
『…わたしでよければ…お願いします…』
俺のは魔法じゃないけど…魔法は在るんだと思うんだ。
だって、さっきまで泣いていた彼女がとても嬉しそうに笑ってるんだから…