KISS AND SAY GOOD-BYE
プァン!プァン!
後方から、車のクラクションの音が聴こえてきたので、振り返ってみると、そこには高山社長のベンツが停まっていた。
『桧山君じゃないか!?
こんなところで何をしてるんだい!?』
「初日の出を見てきて、その帰りにちょこっとドライブがてら寄ってみたんです。」
『わざわざここまで寄り道かい!
家とは全くの真逆じゃないか。
何か有ったのか!?
滝本君は!?』
「実は……
と言う訳で、拗ねて口きいてくれないんです。」
『ハハハ、青春してるんだね。』
「社長!
笑い事じゃ無いんですから……」
『元気出して!
時が解決してくれるから。
それより桧山君、このあと何か用事でも有るかね?』
「いいえ、特に何も無いですけど。」
『そうかぁ、じゃあこれからうちに来なさい。
カニが沢山有るから、一緒に食べようじゃないか。
話したいことも有るから。』
「正月早々宜しいのでしたらお伺いします。
それでは車の後に付いていきますので。」
『それじゃあ行こうか!』
と言う訳で、俺は高山社長の自宅にお邪魔することとなった。
白金台 高山家
「お邪魔します。」
『遠慮しないで、さぁあがりなさい。
ヨンミちゃん(高山社長の奥さんの名)、桧山君が来たから、あれ用意してくれるかい!?』
「は~い!
ちょっとだけ待ってね♪
いま、ヘムルタンの準備してますから。」
『慌てなくて良いよ。』
「社長、こんなに朝早くから本当にお邪魔じゃなかったですか?」
『気にしなくて良いさ!
どうせ、子供達も起きてるし、うちは元々朝は早いんだよ。』
「チャンス君とハヌルちゃんでしたね!?
お年玉あげなくっちゃ!
ポチ袋買っといて良かった~!」
『そんなに気を使わなくても良いよ。』
「いいえ、やっぱり子供に会ったらあげなきゃ正月なんですから。
チャンス君は、12才でしたね。
ハヌルちゃんが……9才かぁ。
じゃあ、こんなもんかな!」
と、最後の方は独り言のように言いながら、ポチ袋にお金を入れていき、筆ペンをお借りして、ハングル文字で【チャンス君】そして、【ハヌルちゃん】とポチ袋の表書きに二人の名前を書いていった。