KISS AND SAY GOOD-BYE
2年生 3学期
2日間掛けて書き上げた企画書をプリンターで印刷して3日の会議に提出した。
が、美華は来ていなかった。
電話にも出てくれない。
3学期も始まり、始業式が終わってからデザイン科の教室に行ってみた。
教室の前にまたもや柘植直美を発見!
「お~い、直美!
ちょっと!」
『あら、桧山ッチ!
どしたんやい!?』
ヘンテコな方言で聞き返しながら遣ってきた。
「美華は!?」
『来てないよ!
お休みだよ。
って言うか、知らないの!?
ミカミカは入院してるし!』
「聞いてないよ!
何で入院してるんだよ?」
『あんた、カレシでしょう!?
そんなことも知らないんだったら、お見舞いにも行ってないって事だよね!?』
「あぁ、元旦の朝にちょっと色々あって、それから会ってないんだよ。
で、何の病気!? どこの病院?」
『ミカミカが教えてもいないのに、あたいの口からは言われへん言われへん!』
「ふざけてないで頼むよ。
教えてぐれたら、一生恩に着るから。」
『恩に着なくて良いよ。
ミカミカから、教えないでよね!ってきつく言われてるもん。』
「マジかよ。
アッ、成山!
ちょっとこっち来て!」
って言ったら成山は、振り向きざまにアッカンベー!ってしてきた。
美華が何か言ったのかも知れないな。
「成山、俺何か悪いことしたか!?」
『私は浮気者とは友達に成れないよ。』
「俺、浮気とかしてないし、美華の勘違いだし、話を聞いてくれないし……!」
『ミカミカを泣かしたんだよ。』
『滝本さん、凄いショック受けてました。』
「誤解なんだって!
頼む。
美華は今、何処の病院に居るのか教えてくれよ。」
じゃあこっちに来て!と言われ、成山と柘植直美の後を付いていった。
遣ってきたのは、デッサン室のような所だ。
『この部屋は、誰も入ってこないから。
じゃあ先ずは私達に事の顛末(てんまつ)を話しなさいよ。』
何か、直美の奴いつもより強気で来やがる!
何か腹が立つけど、ここはぐっと我慢した。
そして根掘り葉掘りと質問責めにあい、結局、棚橋さんの事まで話をさせられてしまった。
「と言う訳だよ。」
『このマセガキ!』
ヤッパ直美に、腹が立ってきた。
「直美、1回しばかせろ!」
『態度悪いと、教えないよ♪』
が……我慢の限界が近付いてきた!
でも、ぐっと我慢すること2回目、成山が口を開いた。
『分かったわ。
教えてあげる。
滝本さんはね、急性虫垂炎で入院しているのよ。
病院は、世田谷に在る巽総合病院だよ。
南病棟の712号室だから。』
「有り難う成山!
で、いつから入院しているの?」
『1月3日の朝だよ。
明け方から急にお腹が痛くなって、救急車で運ばれたんだって。
そのまま入院する事になって、次の日に手術したんだよ。』
「そうだったんだぁ…………
じゃあそろそろ退院する頃じゃ!?」
『明日、退院するって言ってたよ。
今日、これから行くけど、桧山ッチ、一緒に行くかい!?』
えっらそうに!
と思ったが、今回は大人しくしておこう。
だが、次に何か有れば直美、倍返しだ!
と、心に刻んで、3人でバスに乗って病院に向かった。