KISS AND SAY GOOD-BYE
翌日、美華は無事に退院してきた。
それでも、金曜日の今日もう1日休みを貰って、登校は週明けの月曜日からだと成山が教えてくれた。
今日は午前中の4コマだけなので、昼過ぎに美華の家に行ってみた。
インターホーンを押すと、お手伝いさんが出たが美華は居ないとの事。
仕方がないので暫く門の前で待っていたが、寒くなったし帰って来そうな気配も無いので、自販機で温かい缶コーヒーを買って指先を暖めてから、少しぬるくなったコーヒーを一気に飲み干してからバイクに跨がり、新星MUSIC日本支社へ向かった。
結局、美華は1月は1度もバイトには来なかった。
学校でも、休み時間や昼休みにデザイン科の教室に行くが、全く会えずにいた。
学校には来ているらしいが、毎日送り迎えつきで、まともに顔すら見れていないのが現状である。
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美華の居ない1月、俺は他の社員さん達と資料集めや仕入れの価格調査、取引先との交渉から業務提携の依頼、新社屋の内装業者との打ち合わせから、備品の調達と、本当に忙しく動いて学校の機械実習の時よりも真面目に働いていた。
頑張ったお陰で、1月末にはおおかたの目処も立ち、俺達1班と平行して動いていた2班の方も、順調に準備が出来てきている。
2月の建国記念日を絡めた連休中、新星MUSIC日本支社は、第1次社員旅行で100名近くのスタッフが野沢に向けて5台のバスが深夜に出発して行った。
が、俺は今回の社員旅行には参加しなかった。
美華の居ない旅行なんて楽しくないし!
俺は、美華の家に電話して、お手伝いさんから美華に取り次いで貰った。
5度目の電話で、ようやく美華は通話口に出てくれた。
『も し……もし!』
「美華、良かったぁ!
やっと電話に出てくれた。
今、美華ん家の前からなんだけど、会える!?」
『うん……』
「どうした!?
元気無いなぁ。
何かあったの?」
『ちょっと自己嫌悪……』
「そっかぁ…
今から出てこれる?」
『分かったわ。
裏の喫茶【プチ・マリエ】で待っててね。』
「分かった。」
『5分くらいで行くから。』
「ちょっと寒いから、暖かい格好して来いよ。」
『うん。
じゃあ!』
「おう!」
電話を切って、バイクを押して彼女の家の裏に在る喫茶【プチ・マリエ】の駐車場に停めると、メットの中に首に巻いていたマフラーと革のキルディンググローブを突っ込んで、喫茶店の扉を開けた。
チョッピリお洒落なメイド服を可愛く着こなした20才くらいのウェイトレスが注文を取りに来た。
『ようこそいらっしゃいませ。
ご注文は、お決まりでしょうか?』
「このコロンビアコーヒーをお願いします。」
『コロンビアコーヒーでございますね。
畏まりました。
少々お待ちください。』