KISS AND SAY GOOD-BYE
3月に入り、美華もバイトに復帰してきたし、ケータリング会社の新社屋の棟上げも無事に終わり、本格的に立込の工事が着々と進んでいる。
本業でもある学業はと言えば、学年末テストも終わり、もうすぐ3年生になるため、機械科の専門授業のラストスパートをかけている。
3年生からは進学クラスへ編入する為、機械工作や機械設計、機械製図や原動機等々の専門科目は、全て途中までとなる。
なので、通常3年生で習うはずのアウトラインだけをまとめたレポートを渡され、それを元に1週間の課外授業も受けている。
それも終わって、機械科必修教科の単位は貰え、来月から無事に進学クラスで1年間を送ることとなった。
あっという間の3学期だったような気がする。
特に、美華が隣に居ない毎日は味気無く、授業中もバイト中も忙しく集中しているようで、全く集中出来ていなかったみたいだ。
『桧山君、頼んでおいた都内の仕出し屋さんのリストって、まだ集まらないのかい!?』
「アッ、すみません。
忘れてました。
直ぐに作成しますので。」
『どうしたんだい。滝本さんが居なかったから仕事に身が入らなかったのかい!?』
「そういう訳じゃ……すみませんでした。
以後、気を付けます荒木主任。」
『ところで、くみ…じゃなくて篠原さんを見なかったかい!?』
「篠原さんは今、休憩に入ってます。
古田室長と一緒に社食(社員食堂)だと思いますけど。」
『そうか。
桧山君も、食事休憩しとかないと、社食がしまっちゃうぞ。』
「分かりました。
直ぐに行きます。」
『それじゃあお先に!』
と言って荒木主任は、企画推進室の扉を開けて出ていった。
それにしても引っ掛かるんだよなぁ…
篠原さんの事を【くみ】って言いかけたような気が……
まさかぁ!あの二人が付き合ってる?
なんか、面白い事が起きそうな予感が……
さて、俺も飯食ってから資料集めやろうっと!
社食には、なんと企画推進室の1班も2班も皆来て食事していた。
どうやら俺が一番最後らしい。
「すみませんお姉さん、遅くなりました。
A定食お願いします。」
と、満面の笑顔で食券を渡した。
社食のおばちゃんは、『何がお姉さんだよ! おばちゃんで良いよ!』なんて言いながらも、嬉しそうにしている。
お陰で、A定食の唐揚げとライスとポテトサラダが大盛りにしてくれている。
『わぁー桧山君だけ大盛りだよ♪
大サービスだね!
俺にも唐揚げ少し分けてくれよ♪』
「どうぞ、もう最後だから残り物を全部入れてくれたんだと思います。
福を分けますから、どうぞ取ってください。」
『何にせよ、男前は得をするってか!』
「古田室長、男前じゃないですよ。
目鼻立ちがチョット人より整っているだけですよ。」
『ハハハ、桧山君も言うねぇ♪』
皆でワイワイ賑やかに食事して、その後企画推進室に戻って夜9時迄皆でケータリング会社新設の準備を進めていた。