KISS AND SAY GOOD-BYE
新羅(シルラ)ホテルの直ぐ近くにそのお店は在る。
松園(ソンウォン)は、その名の通り松の庭園が有名ではあるが、そのお店は多くの著名人や大使館の人達からも大絶賛の焼肉屋さんである。
極上の牛からほんのちょっとしか取れない貴重な部位を、秘伝のタレで食べさせてくれる。
上カルビや牛フィレが有名ではあるが、アンチャンサル(ハラミ)やチンカルビサル(特上カルビ)の他にも、豚の五枚バラ(オーギョプサル)なんかも絶品である。
韓国初日の夜は、ライトアップされた外の景色を観ながらの美味しい焼肉で、お腹も心も大満足して、1日が更けていった。
翌朝、美華が俺とチャンス君を起こしに遣ってきた。
『リュウ、チャンス君、もうすぐ朝御飯が出来るから起きて!
リュウ!!!』
「お……オハヨ……ファ~~~。」
『もう、大きなあくびして、いったい何時まで起きてたのよ!?』
「深夜2時くらいだったかなぁ……ファ~~
チャンス君、起きな!」
『アッ、桧山さんそれに滝本さんおはようございます。』
「朝御飯出来たってよ!」
『二人とも早く降りてきてよね。』
「『は~い!』」
1階へ降りていくと、もう皆起きて新聞を読んだり、テレビの朝の情報番組を観たりしている。
社長の奥さんと美華が、お手伝いさんと一緒に朝食の準備をしていた。
『リュウ、チャンス君と一緒に歯を磨いて顔を洗ってきたら!?』
「分かった。
チャンス君行こう!」
『ヨボ(あなた)、お義父様、朝食に致しましょ♪』
「ハヌルちゃん、さぁご飯だよ。パパのとなりにおいで!」
『は~い!』
「桧山君、今日は朝食が終わったら本社に行って、各部署を見て回りなさい。
そして、滝本さんと二人で気が付いた点を書き留めておいて欲しいんだよ。」
『それは、本社サイドの問題点としてですか?』
「それは、まぁ気が付いたなら書き留めても良いが、そうじゃなくて日本支社に取り入れたら良いなぁと思ったら、それを実現する為の予定表を作って欲しいのだ。
日本と韓国では、経営の形態も営業システムも、かなり異なるからね!
韓国では当たり前の事が、日本じゃ無理だったりする事も多々あるからね。」
『そうなんですか!?
分かりました。
頑張ってみます。
ねぇリュウ、一緒に頑張ろうね!』
「本当に二人は仲が良いねぇ!」
と、社長のお父さんが言うもんだから、俺は真っ赤になり、ハングル語の分からない美華はキョトンとしていた。
すると、突然チャンス君がハングル語で、
『ハラボジ、チグムド テイブル アレエソ テゥサラムン ソヌルマッチャブゴ イッヌン コシオヨ!』
なんて言う!
俺は、慌てて右手に箸を左手にスプーンを握って食事を始めた。
俺の突然の行動に美華は、
「どうしたの!?
リュウは突然食事しだすし、皆は笑ってるし。
チャンス君は、なんて言ったの!?」
『チャンス君はね、【おじいちゃん、今も二人は、テーブルの下で手をつないでるんだよ!】って言ったんだよ。』
それを聞いた美華は、耳たぶ迄真っ赤になっちゃいました。
「お姉ちゃんとお兄ちゃんは、ラブラブだね!」
と、ハヌルちゃんまで冷やかしてきた。