KISS AND SAY GOOD-BYE
ロッテワールドホテルのセミスウィートの部屋は、淡いピンクの壁紙で統一されていて、とても広い部屋だった。
淡いグリーンの絨毯も、かなり高価そうである。
突き当たりの扉を開けると、そこはフローリングの寝室になっており、ダブルベッドが2つと、その間にサイドテーブル、それに備え付けの冷蔵庫やドレッサーもあった。
寝室にも、リビング横に合ったものより少し小さめではあるが化粧室が備え付けてある。
かなりの豪華さに驚いていたが、美華はやはりお金持ち!
全然おどおどもせず、普通に受け入れていた。
『ねぇリュウ、ルームサービス頼む?』
「お腹空いたの?」
『そうじゃないけど、ホットココアが飲みたくなったから。』
「じゃあ、ついでに俺も!
ホットコーヒーをお願い。」
『は~い!』
注文した飲み物が来る間、ベッドに寝っ転がって韓国のテレビを観ていた。
数分後、届いた飲み物を受け取りテーブルに移った。
「美華は今晩何を食べたい!?」
『何でも良いけど、色んな料理を少しずつ食べられたら良いなぁ~!
だけど、今は無理!
お腹イッパイだよ~!』
「そりゃそうだろう!
まぁ、初めての屋台で物珍しかったんだろ!?
片っ端から食べてたもんなぁ~!」
『そうよ、だってリュウの実家のお店にも、高山社長の奥さんの実家のお店にも無かった料理が沢山有ったんだもん♪』
「それにしたって、あそこで豚の皮を2皿も頼むとは、驚いたよ。
普通の女子高生なら、絶対に気持ち悪がって食べないのに。」
『だってリュウが言ってたじゃない。
豚の皮には、コラーゲンがタップリだから、お肌にも良いって!
それに、あのモチモチッとした食感、癖になりそう。』
「確かにそうだけどさぁ!
じゃあ後で、このホテルの2階に在る【ラセーヌ】で食事をしようか!
バイキング形式なんだけど、日本料理から中華料理、韓国料理からフランス料理まで、兎に角150種類以上の料理が並んでいるから、好きなのを選んで食べられるだろ!?」
『そうねぇ。
それに、私はバイキング形式のレストランに入ったことが無いから、一度行ってみたかったんだ!』
「エッ、バイキング形式のレストランに入ったことが無いって!?
今まで、どんなところで食事をしてきたんだい!?」
『大抵は三ツ星のレストランか、家のシェフの料理だよ。
学食だって初めてだったんだから。
韓定食のお店だって、リュウん家が初めてだったし!』
「マジで!
小学校や中学校の時は!?」
『小学校も中学校も、私立だったから、給食はコース料理が出てたよ。』
「…………す……凄い学校なんだね。」
『そう?
いつもの事だから、あれが当たり前だと思っていたのよ。』
「それが、まさかの武蔵野芸術高校に来るとはねぇ~!
本当なら女学館か御茶ノ水附属なんじゃないの?」
『私もそのつもりだったのよ。
でもね、絵が凄い好きだったから、本格的に勉強したくなって美術の先生に相談したら、この学校を受けるように薦められたのよ。』
「そうだったんだ。
それじゃあ、晩御飯までまだ時間も有ることだし、このホテルん中に在る免税店とかって、見に行く元気はまだ残ってるかな!?」
『免税店!?
行く、いくいく!』
「じゃあ、準備して。
パスポートも持ってね!」
その後、免税店でガッツリ買い物に付き合わされてから、2階に行き食事をすませて、今は夜の9時を回ったところである。
部屋に戻ってきた二人は、それぞれシャワーも済ませてバスローブの状態で、美華は髪を乾かしながら、俺はテレビで韓国のドラマを観ながら、のんびりと寛いでいた。
そして、髪を乾かし終えた美華が、
『リュウ、そろそろ寝る!?』
と、上ずった声で聞いてきた。