KISS AND SAY GOOD-BYE
3年生 1学期
『桧山!
お前も進学クラスか!?』
「吉川!
お前も!?
何かの間違いか手違いかカンニングか?」
『お前、酷い言い方だなぁ。
これでも必死で勉強したんだぜ!』
「でも、何で進学するんだよ!?
お前ん家、陶芸家だろう!
美術科を普通に卒業してから、本格的な修行に入るんじゃなかったのか?」
『あぁ、そのつもりだったけどよ、家の分家の娘が大学進学するって事が、家の親父の耳に入ってよ、
【分家の娘が大学行くんなら、本家のお前も大学に行かないとな!
本家の窯元としても恥ずかしいじゃないか!】
って言われたよ。』
「分家の娘って言ったら、デザイン科にいる吉川 陶子(よしかわ とうこ)ちゃんだろ。
メチャクチャ頭良いぞ。
ハッキリ言ってお前とはレベルが違うんじゃ……」
『そんなこと分かってるさ!
陶子(とうこ)に聞いたら、武蔵野芸大の陶芸研究学科に進むそうなんだ。』
「武蔵野芸大って、まぁ偏差値70は無いとヤバイよなぁ。」
『マジへこむわ~!』
「大体、この学校の美術科に入れただけでも、お前には奇跡だったんだろ!?」
『お前も知ってるだろう、俺が中学のときの成績を!』
「まぁな!
何てったって、サッカーばっかり遣ってたから、勉強してるとこなんて見たこと無かったもんなぁ~!」
『それは言い過ぎだろう!?』
「ハハハ、すまんすまん。
それにしても頑張ったな!
進学クラスへの編入試験を通過するなんて。
今回の編入試験って、けっこう難しかっただろう。
俺だって5教科の合計が450点しか取れなかったんだからな。」
『それって皮肉か!?
平均90点じゃないか。
俺は、合格ラインぎりぎりの300点をかろうじて越えられた程度なんだから。』
「それで吉川陶子(よしかわ とうこ)は?」
『彼女は進学クラスAだよ。』
「従兄妹同士で大変だな。
江戸彩焼き本家の吉川陶斉窯元のお前としちゃあ、良い迷惑だな!」
『笑い事じゃ無いんだから。
江戸彩焼き分家の吉川陶源窯元の陶子は、小さい時から
【絶対に本家になんか負けるな!
負けたら承知しない!】
みたいな教育で育ってきているから、俺の顔を見ただけで睨み付けてくるんだから。
今回、何処の大学を受けるか聴いただけなのに、
【来れるもんなら武蔵野芸大の陶芸研究学科に来てみな!】
なんてバカにされたんだから。』
可愛そうな吉川の話を聴いていると、そこに美華が登校して来た。