KISS AND SAY GOOD-BYE
俺はバイクの後ろに美華を乗せて成城の美華の家をめざした。
もうすぐ美華の家だ!
と、その時、祖師ケ谷大蔵駅の手前の信号で信号待ちをしていると、後ろから美華が、
『リュウ、まだ帰りたくない!』
俺だっておんなじ気持ちだよ。
でもなぁ、美華の御両親が心配するような事をしたくないんだよなぁ。
「ダメだよ。早く帰らないと御両親も心配するし、晩御飯作って待ってるんだろ!?」
『そうだけど……』
「じゃあ、明日は日曜日だから、朝から迎えにきてあげるから、俺んちで一緒にテスト勉強しようぜ!」
『……わかった。
じゃあ、朝何時に来てくれる!?』
「そうだなぁ~よし、朝10時に美華んちに迎えにいくから、今日は我慢してお家に帰ろうな!」
『わかったわ。
絶対だからね♪』
「あぁ!」
『楽しみにしてるから。』
「了解!
さぁて、信号変わったから行くよ!
しっかり掴まっていろ!」
『うん!』
と言って、俺の腰にギュッと両手で抱きついてきた。
俺は、メットのシールドを下ろしてから、ギアをニュートラルからセコに入れて軽くアクセルをふかしながら、ゆっくりとクラッチをつないでいった。
スムーズにバイクは動きだし、ものの数分で美華の家の前に到着した。
「着いたよ!」
『リュウったら速い!
もう着いたの。
じゃあ、最後にギュッとして!』
「あぁ~!」
俺は、美華のメットをバイクのサイドミラーに引っ掻けてから、美華を引き寄せてギュッと小さな体を抱き締めた。
そして、美華が下から見上げてきたので、顔を近付けてプクッとした美華の唇に俺の唇を重ねていった。
『フゥ~!』
と、美華の溜め息が漏れた時、俺の舌が美華の口内へ!
息をするのも忘れる程、狂おしいほどの口付けを交わし、美華が俺にしがみついたまま、尚も求めてくる。
「ファ~」
と、俺も美華も口から息が漏れながら暫く抱き合っていた。
離れたくないなぁと思いながらも、もうお別れの時間だ!
ソッと唇を離したら、
『もっと!』
「もう家に入らなきゃ!
7時過ぎてるよ。」
『だって……』
「また明日!」
『は~い!』
元気のない返事だ。
「明日は、勉強したあと、梨泰院(イテウォン=俺のばっちゃんと伯父さんが遣ってる韓国料理店の名前)でご飯食べて、午後過ぎから一緒に映画館にでも行かないか?
先月末からブルースブラザーズ2000が上映されてるんだ。」
『行きたい!
私、この映画行きたかったんだ!
前作もビデオで観たけど、やっぱり大スクリーンで観たいもんね!
やったぁ~!』
やっと元気になった美華が、門を開けて家の中に入って行くのを見届けてから、俺はバイクのサイドミラーに掛かっている美華のヘルメットを後部シート横のフックに引っ掻けてロックしてから、キーを差し込んでセルモーターのボタンを押した。
ドドドッと低い音と共に、俺のハーレーダビットソンのエンジンは始動して、数分のアイドリングの後、新大久保の俺の実家に向けてハンドルを切った。