KISS AND SAY GOOD-BYE
3年生 夏休み
実力テスト・中間テスト・全国模試・学期末テストと、勉強漬けの日々が終わると、待ちに待った高校最後の夏休みだ。
と言っても、俺達進学クラスは殆ど夏期講習で、毎日登校している。
有るのは週末と8月13・14・15日のお盆、それに8月最後の1週間だけが唯一の休みである。
1教科90分の授業を毎日5教科みっちり遣らされて、帰るのは毎日6時過ぎである。
陶一朗こと吉川は、悲痛な面持ちで、
『真里江っち、パワーが足りないからギュッと抱き締めてくれ~!』
と言いながら、教室内で二人して抱き合ってるし、それをクラスの全員が見ているけれど、敢えて誰も突っ込まないし、そんな元気も無いくらい毎日追い込まれている。
この夏休みの頑張り次第で、入れる大学も1ランクも2ランクもアップ出来るんだから、ノンビリしても居られないのが現状なのだ。
まぁ、俺の場合は余裕でW大学に入れるんだけど、吉川は武蔵野芸大の陶芸研究学科は今んところは無理っぽいんだよなぁ。
それと、今まで美華はO女子大学って言ってたのに、今では俺と同じW大学を受けると頑張ってる。
美華は、W大学の文化構想学部を、俺は、同じくW大学の人間科学部を目指すことにした。
マコチャンこと平井誠君も、W大学って言い出したんだ。
W大学の理工学部の建築学課で学んでから、卒業後はアメリカはH大学にも行って勉強したいそうだ。
凄すぎる。
谷 真里江さんは、家の建具屋を継ぐために、インテリア関係の大学を模索中である。
それぞれの道に向かって少しずつ動き出した俺達は、毎日の勉強の合間を縫って、デートも時々している。
しかし、アルバイトをする余裕は無く、新星MUSICの方が気にはなるが、夕方の6時過ぎまで勉強したあとで、美華を自宅まで送ってから帰宅して飯食ったら、風呂はいってまた勉強だ!
そして、今日は8月の13日。
今日から3日間はお盆のために、夏期講習もお休みだから学校に行かなくても良いんだ。
うちは旧暦のお盆で法事を遣るので、今日は特に何も予定もないが、美華ん所はお坊さんを呼んでお盆の法要を行うそうで、今日は大人しく一人部屋で勉強をしている。
昼食後、息抜きにバイクに乗ってCDショップへと向かった。
店内は、ビヨンセのヒットナンバーが流れていた。