KISS AND SAY GOOD-BYE
俺は、洋楽のコーナーへ行き、色々と真新しいアルバムを物色していた。
ポップアップ広告には、
2003年 この夏 最高の1曲を!
と書かれており、有名なアーティスト達のポスターが壁に貼られておりAvril Lavigne、Katy Rose、Stacie Orrico Stuckなど大人気歌手やショップ一押しのアーティスト等のCDが平積みされていた。
それらを一つ一つ手に取り見ていたら、
『宜しかったら、視聴も出来ますけど如何ですか。』
と、店員に突然話し掛けられた。
その店員は、見た目は大人っぽく背もかなり高くて165cm以上あるみたいだ。
しかし、よく見ると高校生っぽいあどけなさもあった。
「はぁ、どうも!
何かお薦めって有りますか?」
『このレッチリの去年出した【By The Way】ってアルバムはもう買われてますか!?』
「いや、持って無いですけど…」
『それなら、1度これを聴いてみて下さい。
チャドが【very john】と表現した程ジョン色の強いアルバムなんだけど、アルバムチャートでは終にイギリスで一位を獲得したんです。』
「そうなんですか。」
この(アルバイト 小柳)と言う名札を付けた店員は、その他にも
『今年の1月に発売したボンジョビの【バウンス】なんかも良いですよ。
洋楽のアーティストで初めて5大ドームでツアーをしたボンジョビの最高のアルバムなんです。』
「はあ。
そうですか。」
凄い熱い!
この小柳と言うショップ店員が、メチャクチャ熱く語って来る。
『それとかぁ、今までのヒット曲をアコースティックにアレンジしたアルバムで、この
【ディス・レフト・フィールズ・ライト 〜バック・アット・ザ・クロス・ロード】
って言うのも良いですよ。
日本盤には、インターナショナル盤には入ってなかった2曲をプラスしています。
輸入盤よりも、こちらの日本盤を是非お聴きください。』
「それじゃあ、その3枚を試聴させてください。」
『はい、かしこまりました。
どうぞ此方へ!』
「ありがとうございます。」
俺は、視聴コーナーでヘッドフォンを付けて流れてくる曲を聴いていった。
軽く歌い出しの部分を16小節程ザッピングしながら聴いて、2枚目のCDに入れ換えようとしたら、後ろの方で
『杏奈ちゃん、お待たせ!
食事休憩どうぞ!』
『先輩は、何食べたんですか?』
『私はコンビニのおにぎりとお茶だよ。
杏奈ちゃんは何食べるの?』
『うち、新しいギター買うまで無駄使い出来ないからなぁ~。
私は控え室のお茶だけで良いッス先輩!』
『まぁ、それじゃあお腹空いてラストまでもたないわよ。
育ち盛りの高校生なんだから、しっかり食べなきゃ!』
なんか小柳って店員、さっきと話し方まで違うなぁ~!
それに、やっぱり高校生だったんだ!
このアルバイト店員こそ、あと5年後に再び出会って、桧山隆一の奥さんとなる小柳杏奈さんであると言うことを、このときはまだお互い知るよしも無かった。
結局、俺は視聴したCDを3枚とも気に入り、購入して帰った。
それを見届けてから、店員の小柳は一人嬉しそうな顔をして休憩に入って行った。