KISS AND SAY GOOD-BYE
(美華の休日)
お盆の3連休も明けて、16日と17日は週末になるので、実質的には5連休だったが、14日からずっと雨で結局どこにも行かず、家で勉強をして過ごしていた。
1日に2~3回はリュウから電話があった。
「オハヨ~!」の電話
「飯食ったか?」の電話
「お休み!」の電話
時々「愛してるよ♪」の電話
電話の時、リュウの声の後ろから、洋楽の曲が微かに聴こえてきた。
最近買ったお気に入りの曲なんだ!って言ってた。
声を聞いたら会いたくなったけど、この雨の中迎えに来てとは言えなかったから、代わりにパソコンでウェブカムチャットしてた。
~5連休明け~
明けて18日の月曜日、まだ雨が降っていたが、ママがお気に入りの真っ赤なアウディで学校まで送ってくれた。
『マリエ、オハヨ~!』
『美華、オハヨ~!
あれ、桧山君は!?』
『分かんない。
まだ来てないの!?』
『そうみたい。
まぁ、雨降ってるからねぇ。
バイクで来るには辛いからバスで向かってるんじゃないかな!』
『でしょうね。
吉川君も平井君もオハヨ~!』
『オッハー♪
今日からまた地獄が始まるよ~!』
『この5連休の間って予習や復習してた!?』
『聞かないでくれ~!
この休みの間の課題に手こずってたっちゅうの!』
『量が多かったもんねぇ!
おまけに苦手な英語の長文読解、参ったよ。』
『マコチャンは、愛ちんとずっと一緒に居たのか!?』
『愛さんは、両親が家に居たので家族と過ごすからって言うし、雨は止まないし、だから、僕は一人で勉強をして過ごしてたよ。』
『そっかぁ~!
皆、受験生だもんねぇ。
それにしてもリュウったら遅いわねぇ。
まさか、バイクで登校中スリップ事故なんて事は…』
『美華、悪い方に考えないの!』
『だってぇ…』
『オイオイ、滝本!泣くなよ!
よし、俺が今から桧山っちに連絡してやるから。』
『…うん…。』
吉川が携帯電話を取り出して桧山に電話を入れる。
トルルルルル…トルルルルル…
『何度コールしても出ないぞ。
もしかして寝坊してるんじゃないのか!?
連休ボケで!』
『陶一朗じゃあるまいし!
たぶん、もうこっちに向かってるんだけど、バスの中で電話に出るのはマナー違反じゃない!
桧山君が、そんなマナー違反するわけないじゃん!』
『そりゃそうだな!
まぁ、もう少ししたら来るだろう。』
と言っていたのに、結局その日彼は来なかった。
いったいどうしたんだろう…
こんなこと初めてだよ…
とても心配で、帰宅してからも気になって仕方なかった。