KISS AND SAY GOOD-BYE
9月20日の土曜日、今俺は中古のカーショップに来ている。
美華達には、極真空手の土用稽古って言ってあったが、本当のところ実は車の免許を取るために最短合宿コースに入っていたのだ。
8月6日が誕生日だったので、その近くで予約を入れたんだけど、この時期は非常に人気が高く、毎年予約で直ぐ一杯になって仕舞うのだそうだ。
だから、早目に予約を入れたんだけど、それでも満帆で空きが無かった。
ダメ元で、一応キャンセル待ちを入れていたら、突然月末に空きが出来たと連絡が来たので、慌てて準備して翌日には出発していた。
8月31日が卒業検定だった。
一発で受かり、9月8日の月曜日、免許センターで適性検査を受けたあと、学科試験を受け、やはりここでも一発で受かり、その日の内に免許証を手にしたのだ。
アボジ(親父)の知り合いのカーショップのオーナーに頼んで、掘り出し物が出てくるのを待っていたら、昨日連絡が有った。
翌日
遣ってきた【カー・パラダイス本店】
『桧山さんの息子さんですね。
お待ちしてましたよ。』
「何か、急かしてしまって申し訳ないです。」
『いえいえ、こちらとしては何時も桧山さんから沢山の顧客を紹介して頂いてますので、助かってるんですよ。』
「そうなんですかぁ。」
『えぇ、このバブルがはじけた不景気の折り、私も経営難でこの店を畳もうかとまで考えてたんですが、そしたら、桧山さんが【俺に任せとけ!】って言ってくださり、自分とこの塾の生徒の親を次々に連れて来てくださり、今じゃ毎月黒字ですよ。
未だにそのときのお客さんが来てくださるし、お客さんがお客さんを連れてきてくれるので助かってます。』
「それは、新井社長の人徳のお陰でしょう。
うちの父が言ってましたよ。
新井社長に頼んだら、欲しい車が絶対に手に入るんだぞ。
それに、車を買った後も色々心配してくれて、点検や車検何かも予算に応じて考えてくれるし、コーヒーでも飲みに来てください!なんて言いながら、その間に無料で洗車やオイル交換までしてくれるんだから。って喜んでましたよ。」
『何か、面と向かって誉められると、こそばかゆいですなぁ!
それでは、車を見ていただけますか?
一応、オートマチック車で5人乗りの4ドアセダンで黒いのが良いと聞いてましたんで、此方の車を用意しました。』
「これってHONDAのセイバーですね!?」
『はい、アメリカのHONDAから逆輸入してきた別名アキュラと言う車です。
これは、1998年の10月に発売された二代目アキュラです。
初代よりも少し車高が高くなっていますが、見た目は初代と差ほど変わっておりません。
しかし、強度は初代よりもかなり頑丈な造りに成っております。
そして、エンジンなんですが、新たに開発されたV型6気筒 SOHC 24Valve VTEC 2.5L J25A型と言うのが積まれております。
如何ですか!?
先ずは乗ってみてください。』
と言うわけで、俺は運転席に乗り込んだ。
助手席に新井社長が乗ってきて、
『さて、それじゃあ、ちょっとドライブに行きましょうか!』
と言ってから窓を開けて、
『河田店長、私はお客さんの試乗に同行してくるから、お店の方を頼みますよ。』
と言うと、河田店長はニッコリ頷き、深々とお辞儀をしていた。
『それでは、キーはこちらです。』
「はい、それじゃあ、行きますね。」
『どうぞ!』
俺は少し緊張しながらエンジンをスタートさせた。
ドライブにシフトを入れて、ブレーキからソッと足を離して、アクセルペダルを軽く踏み込んだ。
何のタイムラグも殆ど無いままスムーズに走り出した。