KISS AND SAY GOOD-BYE





美華を連れて、久しぶりにハルモニ(婆ちゃん)家の韓国家庭料理店【梨泰院(イテウォン)】にやってきた。



冷菜豚足(ネンチェチョッバル)や春雨スンデ(春雨入り韓国風腸詰め)、雪濃湯(ソルロンタン)やピビンパブ(五目混ぜ御飯)等を頼んで、いつもの2階の小個室に入っていった。



8畳の部屋は畳の間に成っており、ロースター式のテーブルが置かれ、掘りゴタツタイプの客席になっている。



実は、以前連れていって貰った高山社長の奥様の実家の韓国家庭料理店【仁寺洞(インサドン)】は、畳の間の客席は全てこの掘りゴタツタイプだったのだ。



それを梨泰院(イテウォン)で料理長をしている伯父さんに話したら、うちも改装するぞ!と言うことになり、一昨年の秋夕(チュソク=韓国の御盆)に、1週間店を休んで改装工事を行ったのだ。



『あぁ~、お腹いっぱい!

もう食べられないわ!』



「いやぁ、初めて豚足3本
食べる女子大生を目の当たりにしたよ!」



『だってぇ~!!!

こっちの豚足は、醤油ベースのタレに浸けて焼いたもんだし、この豚足はサラダ仕立てになっているし、最後に出てきた豚足は小麦粉着けて油で揚げているから、表面の皮はパリパリなのにその中はモッチモチで、二つの食感が相まってもうたまんないんだから!

それに、柚子味噌が最高のアクセントに成っていて、これなら後もう2~3本はいけれるわ!』



「美華、太るぞ!」



『大丈夫よ。

これでも、帰宅したら2時間は半身浴して汗を出しているし、こんだけバイトで動き回れば、痩せこそすれ太るなんてあり得ないわ!』



「確かになぁ~!

新星MUSICのバイトって、段々ハードになってきてるもんなぁ。」



『仕方ないわよ。

もう大学生なんだから。

高校生の時とは違うわよ。』



「だな!

俺なんか、大学生に成ってからまだ1度も極真空手の道場に行けてないんだから。

その内破門になるよ。」



『わたしだって、大学生に成ってからまだ1度もピアノのお稽古や御花のお稽古に行けてないんだよ。

絵だけは、時々描いてるけどね。』



「今はどんな絵を描いてるの?」



『今はねぇ、羽木公園の満開の梅と行楽客をデジカメで撮った写真を見ながらの油絵なんだ。』



「あぁ、今年の春に行ったやつかぁ。

どっかに出品するの?」



『まさかぁ!

私はリュウとデートした場所を全部描いてるんだから。』



「韓国のロッテワールドホテルの窓から見えた夜景とかも描いちゃったりして!」



『モチロン!

でも、夜景じゃあ無いわよ。

リュウと過ごした一夜の翌朝、東から昇ってくる太陽が、漢江(ハンガン)をオレンジ色に染めているところを描いたのよ。』



「それ、俺にくれないか!?」



『わぁ、恥ずかしいなぁ。

でも、良いわよ。

部屋に飾ってくれる!?』



「勿論だとも!」



『じゃあ明日持ってくるからね。』



「いつか、俺の肖像画も描いてくれるか?」



『そうねぇ……、結婚して10年以上経ってからの方が、リュウも渋味が出て良いんじゃない!?

だから、その時に描いてあげる!』



食事も終わって、マッタリとした時間を過ごしてから、愛車で美華を自宅まで送り届けた。



明日も早いから、もう寝るか!



風呂に浸かって疲れを落とし、日付が変わるちょっと前には寝ていた。




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