KISS AND SAY GOOD-BYE
俺達も毎日忙しく働き、留学生達も日々の授業に加え、査証資格内での活動も充実していき、少しずつ視聴者に認知し始めていると言う実感も感じていた。
俺自身、営業3課に来て早半年が過ぎていた。
7月半ば、いよいよ来週から前期試験が始まる。
試験勉強をするために、今週からバイトも休みを貰い、授業が終われば図書館で勉強したり、週末は美華やマコちゃん達と集まって勉強会をやって過ごしていた。
そして、終に前期試験へと突入だ!
1日目の試験が終わり、バイクで帰宅していたら、信号待ちをしている時、隣で停車中の車の中からクラクションと共に、突然声を掛けられた。
『桧山くんだよね!?』
助手席の窓が開き、中から声を掛けてきたのは、俺の姉貴の同級生で、良くうちにも泊まりに来ていた…………、
「木下さんでしたね!?」
思い出した。
姉貴とは中学・高校と同じで、高校を卒業してからはお袋さんの経営する美容室の跡を継ぐ為、美容専門学校に通ってた木下聖美こと朴聖美(パク・ソンミ)さんだ。
勿論、俺達と同じ在日韓国人である。
『ねぇ、彩は?元気してる?』
「姉貴!?
相変わらず元気です。
今は、親父の学習塾で講師として頑張っていますよ。
いずれは跡を継ぐので。」
『そっかぁ~!頑張ってるんだ。』
「ソンミ氏(聖美さん)は、お元気でしたか?」
『元気!元気!
今日はママとお買い物して、これからランチに行くところよ。
月曜日は、お店もお休みだからね。』
今では彼女も専門学校を卒業して、母親の経営するビューティパーラ(美容室) lovely hairで一緒に働いているのだそうだ。
「そうでしたか。
また何時でもうちにも遊びに来てくださいね。」
『うん、行くよ。
彩に宜しくね!』
「はい、伝えときます。」
『それじゃバイバイ。』
「お気をつけて。」
『リュウ君もね!』
長い信号が変わり、彼女の母親が運転する真っ赤なアウディが走り出した。
俺も、ギアをローに入れて、ゆっくりとクラッチを開きながらアクセルを回していく。
スムーズにスタートしたハーレーは、そのまま新大久保の自宅へと向かって走っていった。
夜になって、仕事を終えた親父と姉貴が帰ってきて、我が家の遅い晩御飯の時間だ。
そこで、姉貴から突然……。