KISS AND SAY GOOD-BYE





『じゃあ、次はトリートメントね。

けっこう綺麗に手入れされてるわね。

殆ど痛んでないわ。

毛先が少しだけ栄養不足かな!』



「だから聖美さん、オッパイが当たってるって!

って言うかノーブラじゃないてすか!」



『そうよ。

さっき外したんだもん。

サービスって言ったじゃない。』



「からかわないで下さいよ。

真面目に遣りましょうよ。」



『真面目に遣ってるわよ。

今日も1日中カットしてカラーリングしてパーマしてって忙しく働いていたんだから。

このFカップの胸がどんだけ窮屈だったか!

肩だって凝るんだから!

だから、リラックスして楽に作業するにはノーブラの方が良いのよ。

わかった?』



「はぁ……もう分かりました。」



『それじゃあ、次はヘアパックするわよ。

これでよしと!

それじゃあ、このまま5分くらい置いとくからね。

何か飲む?』



「アイスコーヒーでも有ればお願いします。」



『はい、どうぞ。

アッ! それからね、大会が終わるまでは出来るだけ辛い食べ物は控えてね!

香辛料の強いものも。

それからニンニクもよ。』



「どうしてですか?」



ニンニクや辛いものがダメなら、俺は一体何を食べれば良いんだよ!と言う勢いで抗議してみた。


が、……。



『当然じゃない!

髪の毛に悪いからよ。

それに、ニンニクの匂いをプンプンさせて大会に出る訳にいかないでしょ!』



「……分かりました。」



『その代わり、大会が終わったら焼肉をお腹一杯ご馳走してあげるから。』



「仕方ないか!

でも、せめてキムチだけでも……」

『ダ~メ!』



「へ~い!」



『帽子もNGね。

蒸れるから。

頭皮に良くないから。』



「分かりました。」



『さて、5分経ったわね。

洗い流すわよ。

もう一度イスを倒すよ!?』



「は~い!」



洗い流したあと、乾いた柔らかいタオルで軽く押さえ付けるように、そして軽く絞るように拭き取っていき、そのあとドライヤーで乾かしていく。



そして、



『もう一度イスを倒すね。

次は眉毛を整えるから。

動かないでじっとしとくのよ。』



「はい。」



『しっかし太い眉毛ねぇ。

ちょっと細くするわよ。

それと、真ん中の産毛の様な眉毛はぬくからね。

ちょっとチクッとするわよ。』



「イテッ!」



『大袈裟ねぇ。
眉毛抜いたこと無いの?』



「初めてですよ。

地味に痛いですね。」



『そんなこと言ってたら笑われるわよ。

女性なんか、眉毛を細く見せるために50本近く抜く子だって居るんだから。

それに、ワキ毛だって剃らずに抜く子も居るのよ。

あれはマジで痛いから!

夏にノースリーブを着るためにスンゴイ努力してんだから。

後は、水着でも超ビキニ履く子は、パンティーラインからはみ出る毛は、毛抜きで1本1本抜いていくんだから。』



「うわぁ~、聞いているだけで痛くなってくるよ。」



『はい、おしまい。

ついでに鼻毛も切っといてあげる。』



「なんか、顔付きが変わったみたい!」



『眉毛の手入れをしたからね。

少しだけ細くしてつり上がり眉にしてみたの。

男前が引き立ってるわよ。

それじゃあ、今日はここまでね。

このシャンプーとトリートメントとフェイシャルソープを持って帰って使ってね。

ちゃんと普段からもヘアケアを忘れないようにね。

次は明後日の21時に宜しくね!』



って言いながら、俺の頬っぺたにチュッ!ってキスしていきやがった。



「何をするんですか?

やめてくださいよ。」



と抗議をすれど、へへへ!って笑ってそのままタオルやブラシやドライヤーを片付けながら



『分かったから、怒らない怒らない!

ジョークよ。

ところでさぁ、家まで送ってくれない!?』



「良いですよ。

どうせ近所だし。

聖美さんっていつも何で通勤してるんですか?」


『私?

私は、ママの運転する車で来て帰りもママと一緒よ。

今日は桧山くんが来るから、はなから送って貰うつもりでいたから、ママには先に帰って貰ったよ。』



「そう言う事ですか!

分かりました。

それじゃあ、早く片付けましょ!」


と言うことで、俺も手伝いながら、5分後には店の照明を落とし、入り口をロックしてから助手席に乗り込んできた。



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