KISS AND SAY GOOD-BYE
『桧山くんって言うか、リュウ君の方が良い!
リュウ君、君って彼女居るの?』
「勿論居ますよ。」
『だよね!
けっこう男前だもんね。
彼女ってどんな子?』
「お金持ちのお嬢!
ホームセンタータキモトの会長の孫娘だよ。」
『ホームセンタータキモトの会長の孫娘!?
それって、スンゴイ金持ちじゃん!
日本全国に150店舗は在る老舗のホームセンターだよね!
そこの孫娘って!
スンゴイワガママな、な~んにも出来ないお嬢様って感じなの!?』
「いいえ!
俺と一緒にアルバイトに気合い入れて頑張ってる豚足やスンデが好きな女の子ですよ。」
『へぇ~、変わってるわねぇ!
バイトって何をしてるの?』
「新星MUSICって知ってますか?」
『当然じゃない!
在日韓国人で、日本で芸能プロダクションを成功させた高山社長の経営する会社でしょ!?
うちの近くにおっきな事務所在るし、うちのママとは知り合いよ。』
「そうだったんた。」
『だって、あそこの社長夫人はうちの本店でいつもカットしたりカラーリングしてくれてるんだよ。』
「そうなんだ。
俺と俺の彼女は、その新星MUSICでタレントマネージャーのアルバイトをしてるんだ!」
『へぇ~!
タレントマネージャーねぇ。
面白いの?』
「メチャクチャ面白いですよ。
って言うか、楽しいんですよ。
自分の力でタレントを売り込んでいって、スケジュールを組んで、売れる為に必要な物を見つけたり見出だしたり、問題点を話し合ったり、そりゃあもう大学の授業なんかよりよっぽど楽しいですよ。」
『でも、大学生がタレントマネージャーって聞いたことか無いわね。
良く社長は許したわね!?』
「って言うか、社長から直接遣るように辞令が出たんですよ。」
『辞令が出たって言うことは、それまでは違う部署で働いてたってこと!?』
「まぁ、転々と色んな部署で遣ってました。
最初は新星MUSICが経営するカラオケ店の新星GTSで副店長してたんだけど、そのあと店長にもなったし、企画開発室に異動になって、新しい会社も立ち上げて、韓国に短期研修にも行かされて、そして今の営業3課でタレントマネージャーって感じかな!」
『凄いわねぇ。
普通のビジネスマン顔負けのアルバイト君だね。』
「聖美さんは、高校ん時に付き合っていた、年上の男前の彼氏さんとはどうなったんですか?」
『それ聞く!?
彩から聞いてないの!?』
「はぁ、姉貴とは家ではあまり喋らないんで!」
『あのバカ彼氏は、うちから借りた100万円と共に消えたわよ!
私が高校を卒業してからも、暫くは仲良く付き合っていたんだけど、私が専門学校に通ってる頃に、あいつはホスト見習いみたいな事遣ってて、そのうちお客も付くようになってからは、独立をしたいって言い出してさ!
後100万円有れば、良い物件を手に入れられるからって金セビッてきやがったんよ。
あんまりしつこく頼むから、ママから借りて、そのお金をあのバカに渡したら、他の女とどっかに居なくなっちゃたって訳!
だから、それ以来私はフリーなんだけどいかが?
お買い得よ。』
「遠慮しときます。
彼女居るし、浮気はしたくないんで!」
『堅いわねぇ~!
一緒に遊ぶくらいなら良いでしょ!?』
「姉貴も一緒になら!
俺、それでなくても前の彼女のせいで、3ヶ月近く彼女とギクシャクしたんで、もう二度とこりごりですよ。」
『ハハハ…、そうなんだ!
じゃあ、カットモデルだけはお願いねぇ。
ちゃんとバイト代も弾むからね!』
そして彼女の家の前に到着した。
うちの家からは歩いても5分と掛からない、昔からの御近所さんだ。
『今日はどうもありがとね!
じゃあ、また明後日に。』
「了解です。
おやすみなさい聖美さん。」
と言ってから、家に入るのを見送ってから車を我が家に向けて走らせた。