KISS AND SAY GOOD-BYE
名刺の住所は、新宿の一丁目で、ビジネスホテル等が立ち並ぶ一画に、場違いなほどデカイ5階建てのオフィスがあった。
駐車場だけでも、50台は停められそうだ。
オフィスの近くで、高山社長の携帯電話に直接電話して、出社しているか、確認したら、出社しているとの事なので、受け付けに行くと、5階の社長室へ通された。
「昨晩は、寝られましたか!?」
『いやぁ、全く寝て無いんだ。』
「あれから、犯人から連絡は有りましたか!?」
『いや、あれっきりだよ!』
「奥さんは!?」
『寝込んで仕舞ったよ!』
「心当たりは有りますか!?」
『もしかしたら、ライバル会社かとも思ったんだが、単に金目的かもしれない。』
「警察には!?」
『話して無いよ。
もしもの事が合ったら困るから。』
「1億円は!?」
『とりあえず用意したけど、あれから犯人からは、何も言ってこないんだよ。』
「もしかしたら、この近くで、高山社長の様子を伺っているとか……。」
『だとしたら、余計に警察には電話出来ないな!』
社長室の窓から、駐車場を覗いてみたら、社員の車と社用車以外には、見覚えの無い車は無かった。
「それでは、もし何か合ったら連絡下さい。
お手伝い出来る事があれば、何でもしますから。」
『心配してくれてありがとう桧山君。』
「それでは、失礼します。」
と言って、一礼してから新星MUSICを後にした。
エレベーターで1階に降りて、正面玄関の方に歩いて行った。
外に出ると、昼近くの夏の太陽は、一気に俺の肌を突き刺し、先ほど迄の冷房の効いたオフィスに逆戻りしたくなる。
駐車場を抜けて、敷地内から出た。
その時、アロハシャツを着た2人組とすれ違ったのだが、妙に気になった俺は、少し歩いてから、角を曲がって、振り返った。
《確か、あの2人って…、ビーチで俺達のパラソルの、少し後ろに居た奴等じゃねぇのか!?》
嫌な予感がしてきた。
2人組は、しばらく新星MUSICの正面ゲートの前をうろうろしてから、路上駐車していた黒のソアラに乗り込み去って行った。
ナンバープレートは
品川300ろ12-12
とにかく気になった俺は、直ぐにタクシーを停めて乗り込み、200m前方を走るソアラの後を付けていった。