KISS AND SAY GOOD-BYE
大田市場方面から野鳥公園の横を通り、倉庫街へとやって来た。
タクシーから降りて、見つからない様に2人組の様子を伺った。
彼らは、J-108と書かれた倉庫に入って行った。
《確か、チャンス君が電話で倉庫の中に居るからって言ってたなぁ!?》
裏手に廻り、中を確認出来る様なところを探したが、小窓は高い位地に取り付けられているので、諦めて、侵入出来そうな扉を探した。
裏手に合った扉の近くには、数台のセダン車が停まっていたので、多分複数人の人間がいるはずだ。
無理をせずに、俺は一旦その場を離れて、高山社長の携帯電話に連絡した。
そしたら、危険だからその場を離れて帰って来なさいと言われた。
俺は再び新星MUSICに戻り、写メで撮影した2人組を高山社長の携帯電話に転送して、詳しい倉庫の場所を教えてから、俺は帰宅した。
高 賢主(コヒョンジュ)
<息子救出作戦>
その日の夜、俺は数十人のスタッフと共に、十台の車に乗り込んで倉庫街へと向かったのである。
犯人の目星はついていた。
目的も分かっていた。
桧山君の見せてくれた2人組みの男は、間違いなく貞森企画の人間だった。
うちの事務所に、幾度となく嫌がらせを掛けてくる、三流芸能プロダクションである。
以前にも、うちの事務所に放火してきたが、証拠不十分で罪に問われなかった。
彼らの目的は、俺の会社を潰す事!
そう易々と潰されて堪るもんか!
今度こそ、貞森を刑務所にぶち込んでやる!
倉庫の裏口まで来て、ピッキングの出来る部下が裏口の鍵をアッと言う間に開けた。
違法ではあるが、そんな事は知ったこっちゃねぇ。
そして、一斉に倉庫の中になだれ込み、息子を救出したのだ。
倉庫の中には、8人の男たちが眠りこけていた。
俺たちがなだれ込んだのを、夢でも見てるかのように、只茫然と眺めているだけで、全く抵抗しなかった。