KISS AND SAY GOOD-BYE
環八通りを南下して、ひたすら海が見えるまで下ると、そのまま海岸線沿いを突き進む。
1時間後には神奈川に来ていた。
目指す場所は、三浦海岸海水浴場の外れだ。
この時期、海水浴場側は凄い人で、デートコースとしては最悪だ。
しかし、三浦海岸沿いを更に南下していくと、泳ぐには適さない岩場の多い所がある。
そこは、少し山間部に入ってしばらく行くと民家と民家の間を抜けていった先に在って、知る人ぞ知る穴場である。
左右を岩場に囲まれた300m程の綺麗な砂浜があり、一部の地元の人達の間では知る人ぞ知るデートスポットである。
途中のコンビニで買った食料やお菓子、飲み物なんかはツアーバッグに詰め込んである。
そして、漸く到着したところは、綺麗な砂浜に青く拡がった海、数人の釣り人と数人のカップル、後は地元の親子が水際で遊んでいるだけの穏やかな風景である。
海水浴場のようなゴミゴミとした人混みは無く、まさに穴場のデートスポットである。
「さぁ着いたよ。
こっから先はバイク入れないから、ビーチまで歩くよ。
荷物が有るから待ってて!」
と言って、ツアーバッグを開けて、中からジュースやオニギリ、お菓子等を入れてあったバッグを取り出して肩に担いだ。
『中に何が入っているの!?』
「オニギリとジュースだよ。」
『さすがりゅう、気が利く!
それにしても、素敵なところね。
海水浴場の外れにこんな隠れスポットが在るなんて知らなかったわ。』
「俺も知らなかったよ。
高山社長が教えてくれたんだ。」
『そうなんだ。
社長もなかなかやるもんね。』
「なんでも、奥さんとのデートで良く来てたそうなんだ。
って言うか、今でも毎年夏になると家族でやって来るんだって。
人混みを避けて、ノンビリ過ごせるし、地元のほんの一部の人しか来ないから、汚れてないのが良いんだって言ってた。」
『確かに、ビーチも綺麗だし、地元の人達がきちんと管理してるって感じね!』
俺は、バッグの中から折り畳んでいた2畳サイズのレジャーシートを拡げて、ビーチの松の木陰にそれを敷いた。
携帯電話の中に入っているmp3サウンドを流しながら、一緒にオニギリを頬張りジュースを飲んで、のんびりと会話をして過ごした。
時々、持ってきたデジカメで写真を撮ったり、裸足で波打ち際を歩いたりと、デートの定番では有るが楽しい一時であった。
夕方近くまでビーチで過ごした後は、美華を乗せて東京へ向かった。
途中のお洒落なカフェに寄って、美華はピラフを俺はカレーライスを食べて、食後にコーヒーを頼んだ。
窓際の席に座り、コーヒーを飲みながら海を眺めていた。
太陽は傾いて、ちょっぴり赤みを帯びてきているが、まだまだ8月の太陽は簡単には沈まない。
その赤みを帯びた太陽の光が、目の前に拡がる海面をキラキラと金色に染めている。
美華がポツリと
『キレイねぇ~。』
と、呟いた。
「美華の方が綺麗だよ。」
とは、さすがにギザっぽいので言わなかったけど、夕日に照らされた色素の薄い美華の髪の毛が赤く染まり、色白な顔もピンク色で色っぽく見えたのは確かだ。