KISS AND SAY GOOD-BYE
2年生 2学期
のんびりと過ごした休日の次の日は、またまた忙しく駆けずり回り、留学生の受け入れ体勢が整った頃には、夏休みも終わり、俺と美華はまた学生生活の日々に戻っていった。
放課後と週末は、勿論ガッツリとバイト三昧ではあるが、それも美華と一緒なら楽しい。
9月半ばの或る日、俺は文化祭の運営スタッフに抜擢されてしまった。
各科から2名ずつ選出なのだが、機械科の科長から無理矢理押し付けられてしまったのだ。
そのため、バイトに行くのが毎日1時間遅くなってしまった。
その事を美華に伝えて、先に行ってもらった。
俺は、生徒会の人達と共にパンフレットを作成したり、予算の分配から前夜祭や後夜祭の段取りなんかを遣らされている。
先に新星MUSIC日本支社に向かった美華は、古田室長に俺が遅れる旨を報告してくれていた。
と、そこへ
『滝本さん、この企画書なんだけど、全員分コピーしといてくれる!?』
「はい。」
『桧山君は?』
棚橋さんの口からりゅうの名前が出ることに苛立ちながらも、
「文化祭の準備で遅れるそうです。」
と答えている私……
『あっそうなの。
ところでりゅう君とは、何処まで進んでいるの?』
「そんなこと、棚橋さんに答える必要があるかしら!?
バイト中なんで、失礼します。
コピー室に行ってきます。」
兎に角、この女と話したく無かった。
頼まれた企画書を手に企画推進室を出ていった。
なのに、この棚橋と言う女は、ワザワザ私の後に付いてコピー室に入ってきた。
『私とりゅう君とは深い仲だったって聞いてるでしょ!?』
「知ってますけど、とっくの昔に終わったことでしょ!
そんなこと、私には関係ない事だわ。」
『あら、そうかしら!?
先月のお盆前のお休みの日、私がチョッと昔の男にストーカーされてるから助けて!って言ったら、直ぐに来てくれたわよ。』
「ウソつき!
その日は、私と神奈川までドライブに行ってたんだから。」
『あらまぁ、そうなの!?
じゃあ、わたしと逢ってた後に貴女んところに行ったのかしら!?
りゅう君も忙しい子ねぇ~♪』
「ふざけないでください!
りゅう君が、そんな風にフラフラしてるわけ無いじゃない。
それに、それがもし本当の話でも、それは彼の正義感がさせたことなんだから。」
と、言ってはみたものの、不安で仕方無かった。
あの日、りゅうは寝坊してて遅れたって言ったもん。
彼が嘘を付いて隠し事をするはずが無いもの。