【短編】十分間の会瀬
 あ、今日も居る。

 電車に乗り込んで一番に目につくシルエット。

 心の中だけでそっと朝の挨拶。

 この辺なら…良いよね?

 人に押されながらもあなたの斜め後ろ姿が見える、扉の近くに立つ。


 扉が閉まってゆっくりと電車が動き出せば、
 背中を車体に預けて一定の振動に身を委ねる。

 そうして窓の外の流れる景色をぼんやりと眺めながら、
 視界の端にあなたを映す。

 あなたはまっすぐ前を向いたまま。

 後ろに立つ私の視線にも気付きやしない。

 でも、それで良い。

 ひっそりとあなたと一時を共に出来たら…

 それだけで幸せ。

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