Love story of the truth
この店での初日の初めてのお客様が、すれ違った男の人だった。
ほのかに香る煙草と爽やかな香水の香りが混じった香りで顔はわからないけれど、すぐにさっきの人だとわかった。
思っていた通りのイケメンで、二重の黒い瞳、スーっと通った鼻筋、形のいい唇。少し短めの黒髪で、背が高くて。

「俺に惚れた?」

そう言われた時は心臓が高鳴った。

「可愛い名前だね。」

そう言われた時は有り得ないくらいにときめいた。

だけど、すれ違った時に一緒に歩いていた派手な女の人、トオルさんが「手を出すなよ」と言っていた事が・・・私の中で繋がって営業スマイルで軽く流した。

それからしばらくして、新しいお客さんが来て・・・そのお客さんと会話をしながら、トオルさんと話している男の人をトキドキ見ていた。
目が時々合うと、微笑み返される。その微笑みが心臓を鷲掴みにされて離さない。
この人に恋をしたら、間違いなく苦労するとわかっているのに・・・。

私がお客さんの相手をしている間に、男の人は居なくなっていた。
いつの間に帰ったのだろう。
また派手な女の人の所に戻ったのかな?
この日は店をあがるまで、そんな事をずっと考えていた。


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