夜をすり抜けて
「いや、つらいのはわかるよ。お前美里ちゃんにベタぼれだったからさ。結婚の日取りだって決まってたんだろ? それ振られたら、そりゃこたえるわ」
……
元カノは美里さんっていうらしい。
結婚の約束までしてたんだね…。
「でもまさかなぁ、お前がそっちに走るとは」
「そっちってどっちよ?」
カツ丼をもごもごしながら樹が訊く。
「ロリコン…?」
「バ、バカッ」
大声で、もはや立ち上がるくらいの勢いで樹は否定した。
「こ、この子は親戚の子だ。そんなんじゃないぞ!」
「何だ、そうなの?」
祐二さんが訊くので、わたしは重々しく首を横に振った。
「まっ、真琴っ、お前空気読めって!」
「……だって親戚じゃないし」