夜をすり抜けて

慌てる樹を、祐二さんは憐れむような目で見た。


「いいよ別に。人それぞれなんだし気にすんな樹。お前が幸せならそれでいいし」


「ち、違うってば」


樹はまだ何かブツブツ言っていたけど、祐二さんは取り合わずに話題を変えた。



「ところで佐伯さんから連絡あったのかよ?」


カツをくわえたまま樹は首を横に振る。


「まだ」


「まだ…ってな、向こうはもう連絡してくる気なんかさらさらないってことだぜ。
わかってんの?」


「わかってるよ」


憮然として、樹が答えた。



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