夜をすり抜けて

「わかってんなら、そんな借金かぶってやる必要ないだろ?」


「いや、ハンコ押したし、もはや拒否る権利はないし」


「バカ、自己破産でもして、ほっぽっとけ」


祐二さんはきっぱりと言い放った。


「自己破産とか…。ブラックリスト載るのやだもん俺。もうローンも組めなくなるんだぜ? 将来、車とか家とか買いたいし」



そこで祐二さんはハァ…と一つ、大げさな溜め息をついた。


「樹、お前なぁ、借金押し付けられて一年以上放置されてるんだぜ? 普通電話の一本くらい寄こすだろ?」


「事情が…あんだよ、向こうにも」


「借金返せない事情はあっても、電話できない事情なんてねーよ、バカ」


「……」



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