夜をすり抜けて
そうしてトラックに戻り、また旅が走り出した。
取りとめのない会話はあまり続かずに、車内を静寂が支配していく。
目の前を行く車のテールランプを眺めながら、わたしはヒロミとのことを考えていた―
樹が佐伯さんを信じるように
祐二さんが樹を信じるように
わたしはヒロミを信じてはいないし、信じてもらってもいない。
イジメられてもなお、わたしが彼女を断ち切れずにいるのは、そういうことではなく、もっと臆病で感傷的で自分本位な気持ちからだ。
まだ――
わたしは何にも始めてはいないんだな…なんて思う。