夜をすり抜けて
桜
朝、目覚めると毛布が掛けられていて、目の前がパァッと明るくって真っ白だった。
わ、桜…!
一瞬、天国かと思った。
3月半ばでいきなりこんなに満開なんだもん。
昨日までどこにも咲いてなかったよ?
トラックは桜並木の真ん中に駐車していた。
運転席に樹はいない。
車を降りて花びらの上を歩いて行くと、樹は洗車に使うスプレーを噴きかけて、わたしの学生鞄を拭いていた。
「樹?」
声をかけると彼は顔を上げる。
「お、よく眠れたか」
「うん」
「おはよ」
桜の下で、樹がニコニコって笑った。