夜をすり抜けて
去年の秋の大会が終わり、1コ上の三年の先輩が引退するときに、わたしはひとりの先輩に声をかけられた。
優しくって明るくってテニスが上手で、みんなが尊敬していた憧れの先輩。
女子テニス部のキャプテン。
「真琴が一番がんばってたから、あげるね」
先輩は愛用していたラケットをわたしにくれたんだ。
うれしくって涙がでたよ。
でも…
それ以来わたし達は、少しずつ変わってしまった。
一人だけいい子ぶって先輩に取り入ってたと思われたみたい。
初めは遊びに誘われなくなった程度だったんだけど、だんだんと物を隠されたり聞えよがしに悪口を言われるようになった。
でも今日みたいなのは過激な方で、彼女たちは他の生徒や先生に見咎められるようなことはあまりやらない。