夜をすり抜けて
「いや、何か返しそびれちゃってさ」
と樹は笑った。
「CDはプレーヤーに取り込んだらもういらないからって全部貸してくれてたし、部屋に置きっぱだったものが何点かあって…
返そうと思ってまとめてたんだけど」
「返せなかったの?」
「先延ばしにしてるうちに、今更返しに行くのもどうか…ってほど延びちゃって。
捨てるのも何だし」
なんて彼は言った。
夜とは違い高速道路は交通量が多く、こっちの三車線も対向車線側も車であふれていた。
「俺さぁ、あいつに別れを切り出されたとき、自分のせいだし見栄張って結構潔く引いたんだよね」
ぽつぽつと樹は話を続けた。