夜をすり抜けて

オーダーを取りに来た店員さんに醤油ラーメンを注文しようとすると、樹は


「塩、塩、塩だ。ここは塩」


と、やたら塩ラーメンを推してくる。


「んじゃ、塩で」





出てきたラーメンの黄金に輝くスープを一口すすり、「ほぉ―――っ」と二人してのけぞった。


「ヤバ」


「うま」


湯気の向こうで樹が笑う。


「運転してるとさぁ、あんま顔見てしゃべれないだろ? 真琴突然元気なくなるから、焦る」


あ…気にして連れ出してくれたんだ。


「えへへ、メールの返信来ないかもって考え出したら一人でテンパッちゃって」


「そっか」


「…うん」


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