夜をすり抜けて

メールをチェックして顔を上げると、樹はもう支払いを済ませて店の外を歩き出していた。


わたしは携帯を手に持ったまま走り出し、その後ろ姿を追いかける。




「樹っ」


真後ろまで追いついて呼びかけると、彼がピタッと足を止め、わたしはドスンとその背にぶつかった。




「メール来たぁ…!」


思わず腕を巻きつけて、そのまま樹の背中にしがみつく。


「お、マジか?」


うんうんと、その背中に顔をうずめたまま、わたしは何度もうなずいた。


「何て?」


「メールありがと…って。明日待ってるって」


お弁当一緒に食べよって



ずっと見ない振りしててゴメンね…って。







< 136 / 163 >

この作品をシェア

pagetop