夜をすり抜けて

「よかったじゃん」


くっついた背中から声が響いてきた。


うん、と答える代わりに巻きつけた手に力を込める。


嬉しくってホッとして涙が出たよ。


樹はそれがわかるのか、そのままの姿勢で待っていてくれた。


ここはサービスエリアへ行き交う人々の通り道になっているから、結構恥ずかしいはずなのに、彼は背中に女の子をひっつけたまんま、じっと立っていた。





だんだん興奮状態が治まってくると、自分がしている大胆な行動に動揺する。




今わたし、樹を後ろから抱き締めているんだよね。体をギュウッて密着させて…



< 137 / 163 >

この作品をシェア

pagetop