夜をすり抜けて
「小さいんだな」
真ん前に立つと、わたしの背は樹の胸の辺りまでしかなくて
樹はわたしの頭に手を置くと、グーッと押さえつけてもっと縮めようとしてくる。
「い、痛いよ?」
痛がるとクスクス笑うし。
「真琴」
「ん?」
「俺は大丈夫だから」
顔を上げると樹はもう笑ってなくて、真面目な顔してわたしを見ていた。
「こんなチビすけが明日からまた、ベソかきつつもジタバタがんばるんだろ?
だったら、大人の俺ががんばらないわけにはいかないでしょーが」
なんて彼は言った。
「だから心配しないの」
また笑顔になって、樹はトラックに向けて歩き出す。