夜をすり抜けて
タイムリミット
車に戻ってシートに座ると、樹はエンジンをかけトラックを出した。
ちらっとサイドミラーを確認しながら大きくハンドルを切る。
そのしぐさをこれでもう何回見たのかな?
高速道の車の流れに乗ると、樹の目はフロントガラスの先に真っ直ぐ注がれる。
しゃべっていても笑っていても、目だけはずっと前を見ているんだよ。
その横顔を見るのが好きだったりして…
「お、これ俺の持ち歌」
CDから流れ出したバラードに合わせ、突然樹が歌い出した。
「わたしもこの歌好き!」
一緒に口ずさむ。
以降ノリのいいのもしっとりしたのも、もれなく二人で歌い続ける。
車内はにわかカラオケボックスと化して、いやぁ歌った歌った…!